ベイエリアは、米カリフォルニア州北部のサンフランシスコ沿岸地域の総称で、同州経済を支える主要地域。西海岸における金融、保険産業の中心地サンフランシスコと、その南のサンマテオ、サンタクララ両郡などに広がる IT産業クラスター「シリコンバレー」一帯は、世界で主導的な役割を果たす先端産業の集積地として知られる。そのリベラルな土地柄から、文化、芸術などでも多様な発展を見せる。
世界銀行と米労働省のデータによると、ベイエリアの経済規模は8,410億ドルで、国別のランキングに当てはめるとトルコとオランダの間の世界18位にランクされるほどの大きな規模を持つ。
日系企業数は最高記録を更新
ジェトロ・サンフランシスコが実施したベイエリア日系企業実態調査2018年によると、北カリフォルニア26郡(カウンティ)で存在が確認できた日系企業は、2018年3月時点で913社だった。これは、日系企業数が過去最高となった。2016年の前回調査の770社を大きく上回るもので、企業数の最高記録を大幅に更新した。今回の調査で新たに存在が確認できた企業は143社で、このうち2016~2017年に新たに設立された企業は42社だった。
多彩な業種が進出するベイエリア
ベイエリアへ進出する日系企業は、もともとシリコンバレーの IT企業とのアライアンスを 目指すIT分野が主であった。しかし近年これに加え多様な産業分野の企業が進出するようになってきている。2016年調査では外食産業、2014調査ではアパレルや生活雑貨の小売、食品小売の進出が目立っていた。さらに今回の調査では、製造業の進出が際立っていて、ベイエリアに進出する業種はさらに広がりを見せている。
立地の状況
所在地が確認できた913社の立地状況をみると、「サンタクララ郡」の占める割合が最も大きく44.5%だった。次いで多かったのは、近年企業の進出が目立つ「サンフランシスコ郡」の19.2%だった。3番目に多かったのは、サンタクララ郡とサンフランシスコ郡の間に位置する「サンマテオ郡」で、18.2%を占めた。これら3郡の後に次いだのは、サンフランシスコからベイブリッジを渡った湾岸の東部に位置し、近年再開発が進むオークランド市を抱える「アラメダ郡」の11.2%だった。これ以外の郡に立地する日系企業も存在するものの、その数は多くはなく、上位4郡が9割以上を占めている。
ベイエリアの日本企業の約半数が集まるサンタクラ郡を市別にみると、シリコンバレーの中心都市で、カリフォルニア州第3の都市の「サンノゼ」が最も多く、39.2%と全体の4割近くに達した。それに次いだのは、インテルなどの世界的に有名な半導体メーカーが本社を置く「サンタクララ」の21.2%で、3 位はヤフーの本社やマイクロソフトの研究所が所在すること で知られる「サニーベール」の15.5%だった。
ベイエリア拠点数、
スタートアップ投資件数・額
ともに日本が1位
日本貿易振興機構(ジェトロ)が発信する「ビジネス短信」の発表(注1)によると、ベイエリアにイノベーション拠点(注2)を持つ企業222社のうち、日系企業は52社と全体の約25%を占め、米国(39社)、フランス(22社)、ドイツ(20社)などを抑えて首位となった(図1参照)。
発表によると、日系大手企業の進出が増加してきた2015年以降、その多くは情報収集を目的にしており、スタートアップとの協業が進まない状態にあった。大手企業とスタートアップとの企業文化の違いや、現地イノベーション拠点と本社との意識の差などが、その要因とされる。しかし最近では、日系企業の活動が単なる情報収集ではなく、出資や契約など、本社を巻き込んだ形の実態を伴ったビジネスに変化してきているともいわれる。また、外国企業別のCVCとしてのベイエリア地域への出資実績(2015~2018年)において、出資金額で中国(160億ドル)、ドイツ(58億ドル)などを抜いて、日本(249億ドル)が1位だった(図2参照)。出資金額は、ソフトバンクによるウーバー・テクノロジーズへの出資などの大型案件が牽引したとみられるが、取引件数でも中国(158件)、英国(90件)などを抜いて、日本(202件)が1位となった。調査結果はベイエア地域において、スタートアップとの協業手段として出資する企業の中で、日系企業の存在感が大きいことを示している。
(注1)Mind the Bridge(マインド・ザ・ブリッジ:MTB)の2019年9月25日発表の調査レポートによる。MTBはサンフランシスコに拠点を置き、イノベーション・アドバイザリー・サービスを提供する。調査対象は、フォーブス・グローバル2000とフォーチュン・グローバル500に選出された大企業など。
(注2)ローカルエコシステムの情報収集、インキュベーション、アクセラレーション、戦略的協業を目的としたラボ施設、プロトタイプや研究者獲得を目的とした研究開発(R&D)センター、出資機能を兼ね備えたコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)オフィスなど。少なくとも1人以上のフルタイム駐在員をイノベーション目的に設置している拠点が対象。
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ベイエリア 日系企業の概況
ベイエリアは、米カリフォルニア州北部のサンフランシスコ沿岸地域の総称で、同州経済を支える主要地域。西海岸における金融、保険産業の中心地サンフランシスコと、その南のサンマテオ、サンタクララ両郡などに広がる IT産業クラスター「シリコンバレー」一帯は、世界で主導的な役割を果たす先端産業の集積地として知られる。そのリベラルな土地柄から、文化、芸術などでも多様な発展を見せる。
世界銀行と米労働省のデータによると、ベイエリアの経済規模は8,410億ドルで、国別のランキングに当てはめるとトルコとオランダの間の世界18位にランクされるほどの大きな規模を持つ。
日系企業数は最高記録を更新
ジェトロ・サンフランシスコが実施したベイエリア日系企業実態調査2018年によると、北カリフォルニア26郡(カウンティ)で存在が確認できた日系企業は、2018年3月時点で913社だった。これは、日系企業数が過去最高となった。2016年の前回調査の770社を大きく上回るもので、企業数の最高記録を大幅に更新した。今回の調査で新たに存在が確認できた企業は143社で、このうち2016~2017年に新たに設立された企業は42社だった。
多彩な業種が進出するベイエリア
ベイエリアへ進出する日系企業は、もともとシリコンバレーの IT企業とのアライアンスを 目指すIT分野が主であった。しかし近年これに加え多様な産業分野の企業が進出するようになってきている。2016年調査では外食産業、2014調査ではアパレルや生活雑貨の小売、食品小売の進出が目立っていた。さらに今回の調査では、製造業の進出が際立っていて、ベイエリアに進出する業種はさらに広がりを見せている。
立地の状況
所在地が確認できた913社の立地状況をみると、「サンタクララ郡」の占める割合が最も大きく44.5%だった。次いで多かったのは、近年企業の進出が目立つ「サンフランシスコ郡」の19.2%だった。3番目に多かったのは、サンタクララ郡とサンフランシスコ郡の間に位置する「サンマテオ郡」で、18.2%を占めた。これら3郡の後に次いだのは、サンフランシスコからベイブリッジを渡った湾岸の東部に位置し、近年再開発が進むオークランド市を抱える「アラメダ郡」の11.2%だった。これ以外の郡に立地する日系企業も存在するものの、その数は多くはなく、上位4郡が9割以上を占めている。
ベイエリアの日本企業の約半数が集まるサンタクラ郡を市別にみると、シリコンバレーの中心都市で、カリフォルニア州第3の都市の「サンノゼ」が最も多く、39.2%と全体の4割近くに達した。それに次いだのは、インテルなどの世界的に有名な半導体メーカーが本社を置く「サンタクララ」の21.2%で、3 位はヤフーの本社やマイクロソフトの研究所が所在すること で知られる「サニーベール」の15.5%だった。
ベイエリア拠点数、
スタートアップ投資件数・額
ともに日本が1位
日本貿易振興機構(ジェトロ)が発信する「ビジネス短信」の発表(注1)によると、ベイエリアにイノベーション拠点(注2)を持つ企業222社のうち、日系企業は52社と全体の約25%を占め、米国(39社)、フランス(22社)、ドイツ(20社)などを抑えて首位となった(図1参照)。
発表によると、日系大手企業の進出が増加してきた2015年以降、その多くは情報収集を目的にしており、スタートアップとの協業が進まない状態にあった。大手企業とスタートアップとの企業文化の違いや、現地イノベーション拠点と本社との意識の差などが、その要因とされる。しかし最近では、日系企業の活動が単なる情報収集ではなく、出資や契約など、本社を巻き込んだ形の実態を伴ったビジネスに変化してきているともいわれる。また、外国企業別のCVCとしてのベイエリア地域への出資実績(2015~2018年)において、出資金額で中国(160億ドル)、ドイツ(58億ドル)などを抜いて、日本(249億ドル)が1位だった(図2参照)。出資金額は、ソフトバンクによるウーバー・テクノロジーズへの出資などの大型案件が牽引したとみられるが、取引件数でも中国(158件)、英国(90件)などを抜いて、日本(202件)が1位となった。調査結果はベイエア地域において、スタートアップとの協業手段として出資する企業の中で、日系企業の存在感が大きいことを示している。
(注1)Mind the Bridge(マインド・ザ・ブリッジ:MTB)の2019年9月25日発表の調査レポートによる。MTBはサンフランシスコに拠点を置き、イノベーション・アドバイザリー・サービスを提供する。調査対象は、フォーブス・グローバル2000とフォーチュン・グローバル500に選出された大企業など。
(注2)ローカルエコシステムの情報収集、インキュベーション、アクセラレーション、戦略的協業を目的としたラボ施設、プロトタイプや研究者獲得を目的とした研究開発(R&D)センター、出資機能を兼ね備えたコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)オフィスなど。少なくとも1人以上のフルタイム駐在員をイノベーション目的に設置している拠点が対象。